海外特許制度の改正に関して、当事務所が独自に集めたニュースの抜粋情報です。
1.米国 特許出願の審査着手前の人工知能による先行技術調査を申請できる試行プログラムを開始
米国特許商標庁(USPTO)は、2025年10月8日付け連邦官報に、発明特許出願について、審査着手前に、人工知能(AI)を用いた先行技術の自動検索結果の開示を求めることができる「自動化調査(Automated Search)試行プログラム」を立ち上げることを通知しました。この試行プログラムへの参加申請は、2025年10月20日から開始されます。
2.米国 特許請求範囲が簡素な出願に対する新たな早期審査試行プログラムを開始
米国特許商標庁(USPTO)は、2025年10月27日付け連邦官報に、特許請求範囲が簡素な出願に対する早期審査試行プログラム(Streamlined Claim Set Pilot Program)を新たに開始することを通知しました。簡素な特許請求範囲とは、「独立クレーム数が1つ以下、かつ、クレーム総数が10以下」などの所定の要件を満たすものを言います。この試行プログラムは、2025年10月27日から開始されます。
3.米国 長官を含む合議体が特許審判部の査定系審決における主題不適格の拒絶理由を取り消す決定
米国特許商標庁(USPTO)の特許審判部(PTAB)は、2025年9月26日、機械学習に関する特許出願を特許法101条のもとで主題不適格とした査定系審決について、USPTO長官を含むメンバーによる審決レビューにより主題不適格の拒絶理由を取り消す決定がなされたことを公表しました。 なお、末尾に、コンピュータ関連発明について、「主題不適格」の判断を覆した最近のCAFC判決やPTAB審決を列挙しておきます。
4.米国 特許付与後の再審理開始の可否の決定手続に関する長官覚書を発行
米国特許商標庁(USPTO)は、2025年10月17日、特許審判部(PTAB)における特許付与後の再審理(改正特許法-America Invents Act-にもとづく当事者系レビュー手続および特許付与後レビュー手続)の開始可否の決定について、USPTO長官が当該決定を行う旨の覚書を発行しました。この覚書で示された長官決定手続は、2025年10月20日より施行されます。
5.米国 審査官に対し2026会計年度の業績査定計画を通達
米国特許商標庁(USPTO)は、2025年10月2日、特許審査官に対し、2026会計年度(2025年10月1日~2026年9月30日)の審査官の業績査定計画(Examiner Performance Appraisal Plan: FY26 PAP)を通達しました。PAPは審査官の業績評価指標を示したものです。FY26 PAPには、審査の質や、審査官とのインタビューを行う機会に影響を与えるような変更が含まれています。
6.米国 継続出願を繰り返して競合製品を包含するクレームとした特許について「手続懈怠」を認めない判決
米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、2025年8月28日、"GOOGLE v. SONOS"事件の控訴審において、継続性出願を繰り返して競合者の製品をカバーするようにクレームを作り込んだ特許につき、特許権取得の「手続懈怠」の法理にもとづいて権利行使不能とした連邦地裁判決を誤りとする判断をしました。「手続懈怠」の法理とは、特許法制度の甚だしい濫用による不合理かつ弁解の余地のない手続遅延の後で発行された特許に対し、特許侵害訴訟において権利行使不可の抗弁を行うことができるとする衡平法上の法理です。
7.欧州 異議決定に対する審判段階から参加した者のみでは審判手続を継続できないと判断
欧州特許庁(EPO)拡大審判部は、2025年9月25日、異議申立の決定に対する審判が異議手続の当事者によって取り下げられた場合、審判途中で参加した参加人だけでは審判手続を継続することができないとの審決を下しました(G 2/24)。本審決は、過去の拡大審判部審決(G 3/04)の有効性を確認するものです。
8.欧州 包括委任状で手続を委任できる者を手続当事者の従業員に制限
欧州特許庁(EPO)は、2025年8月4日、包括委任状(general authorisation)の登録について、手続当事者(出願人など)の従業員に委任する場合に限るとする手続変更を公表しました。 この変更は、2025年12月1日より実施されます。
9.中国 最高人民法院が訴訟事件における専利評価報告書の取扱を明確化
中国最高人民法院は、2025年8月1日、国家知識産権局(CNIPA)が作成する有効性評価報告書(専利権評価報告書)の訴訟事件における取扱を明確化する「回答(批复)」を公示し、同日に施行しました。
10.韓国 政府組織法の改正により特許庁を知的財産処に昇格
韓国政府は、2025年10月1日、政府組織法の一部改正を施行し、「韓国特許庁(KIPO)」を「韓国知的財産処(Ministry of Intellectual Property; MOIP)」に昇格しました。
11.シンガポール 特許審査ハイウェイ試行プログラムの利用による庁手数料還付を開始
シンガポール知的財産庁(IPOS)は、2025年9月12日、特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムを強化し、特許出願の審査にPPHを利用する際のサポートを強化するため、庁手数料の還付措置を導入する試行プログラムを開始することを公示しました(Circular No. 4/2025)。
12.マレーシア 特許付与後異議申立制度を開始
マレーシア知的財産庁(MyIPO)は、2025年10月6日、延期されていた「特許付与後異議申立制度」の開始を通知しました。 併せて、同制度に関する特許規則の改正なども公示されました。制度開始は2025年12月31日で、同日以降に付与された特許に対して適用されます。実用新案登録にも同様に適用されます。
13.ベトナム 日本特許庁との特許審査ハイウェイ試行プログラムの申請受付状況を公表
ベトナム国家知的財産庁(NOIP)は、2025年10月16日、日本特許庁(JPO)との間で行っている特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムのもとで受け付けたPPH申請について、2025年度上半期の受付件数と、2025年度下半期の受付上限件数を公表しました。
14.ネパール 商標登録および維持に関する通知を延期(続報)
ネパール産業省(DOI)は、2025年9月25日、先に行った商標登録および維持に関して使用証拠の提出を求めることなどを規定した通知について、追って通知するまで延期する旨の通知をしました。
15.ブラジル 特許審査ハイウェイ試行プログラム フェーズVの申請受付規則を変更
ブラジル産業財産庁(INPI)は、2025年9月30日付け産業財産公報(PRI No. 2856)において、日本特許庁を含む多くの国/地域の特許庁との間の統合型特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラム フェーズVについて、PPH申請の受付件数に関する新たな規則を定めた省令(PORTARIA /INPI / DIRPA No. 16/2025)を公布しました。新規則は、2025年10月1日より適用されます。
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